泣きたい私とワクチン

 

注射針が私の右腕に深く刺さった。


「痛ってぇ〜」と内心思いながらも、ここで「痛ってぇ〜」と実際に叫んで泣き喚くわけにはいかないとぐっとこらえる。インフルエンザの予防摂取は5年ぶりである。そしてその間インフルにかかっていない。今年も予防接種を行う予定はなかったけど、バイト先の方針で全員受診しなければならないらしい。受診費も経費で落とせるらしいから、ありがたく受けさせていただいた。

この診療所は小児科もあるからか、隣の診察室や待合室から泣き叫ぶこどもたちの声が聞こえる。

キッズ「いやぁあぁあああああああぎゃああああ」
ワタシ「マヂそれな〜。」

なんて全力で共感しながら痛みをごまかす。
そういえば最後に痛くて泣いたのはいつだろう。
いつから人前で泣けなくなったんだろう。

「男の子でしょう。」
「強くありなさい。」
「泣かなくて偉いね。」
「大人が人前で泣くなんてみっともない。」

そんな言葉や思想たちが世の中にははびこっているせいなんかな。

「辛いとき、痛いときは思いっきり泣きましょう!バンザイ!」
みたいな世の中になってくんないかな。


「終わりです。激しい運動は避けてくださいね。」
気づいたら注射は終わっていた。

痛みはひいて、右腕には小さい絆創膏が貼ってある。

 


今から20分坂を登って大学に行かなければならなかったが、思ったより早く受診が終わったので、一旦家に帰ることにした。朝からとっても時間に余裕がある。これが丁寧な生活というやつか。ということでとりあえずそれっぽくコーヒー豆を挽いてコーヒーを淹れる。最近ドリッパーを変えたところ、急に味に深みが出て美味しくなった。気がする。多分思い込みだ。


ところで、激しい運動ってどのくらいのことをいうんだろう。先生に聞きそびれてしまったことを今さら後悔する。先生、20分坂を登る通学は、激しい運動に入りますか。今夜自動車学校の教習で2時間ほど運転するんですが、緊張状態によるストレスでワクチンのなにかしらがどうにかなったりしませんか。明日提出のレポートがちっとも終わってないんですが、私はこんな記事書いてる場合ですか。

ねぇ先生。ねぇねぇ。

インフルエンザのワクチンが私の体の中に注入されてからというもの、なんだか少し具合が悪い気がする。病は気からとは言うけど、思い込みは体調も悪くするし、コーヒーも美味しくするしすごいなぁと関心してしまう。得体の知れないものが針によって注入されたと考えれば考えるほど体調が悪くなっていく気がするから、思考を停止させよう。ついでにレポートのことも都合よく忘れることにしよう。

 

今ごろワクチンに私の身体の中の免疫細胞たちが反応してインフルエンザウイルスに対する抗体をつくってくれてるんだろうなーなんて細胞たちに思いを馳せてみる。

 

免疫細胞くんたち、

気楽にがんばれ、

辛い時はサボって思いっきり泣きましょう!!